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2007年11月 アーカイブ

2007年11月13日

続報

 天才食堂店主はついに長い山道をおりてきたらしい。山のいただきにはあっという間にのぼり、茸を採ってしまった。しかし彼女は決定的な見当違いをしていた。山道はのぼりよりも下りの方が大変だということだ。
 予想以上に険しい道を彼女はよろよろと歩いて帰ってきたと言う。しかし、猿におそわれそうになったり、小石につまずいたりしながらも、無事戻って来れたのは、途中でジープに乗せてもらったり、木の実を分けてもらったり、実にたくさんの人に助けてもらったおかげだそうだ。彼女は、山で働く人々の、真摯な労働のうつくしさに強く胸をうたれたらしい。
 そうしてたどり着いたボロ家の、見慣れたはずの台所が、異彩を放ってうつると彼女は言う。このキノコ、どうしようかしらん、彼女は流しの前で、困惑している。また、高度の違いによる気圧の変化に、まだ体がそわそわしているため、新たな仕事の山をちら見しつつ、みなさま、ご迷惑をおかけしますがお許しください、と彼女は話している。

日時: 2007年11月13日 11:22 | パーマリンク | コメント (2)

2007年11月15日

純ちゃんの本が出た

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wrap around robe松下純子さんの新しい本『型紙いらずの着物リメイク・ドレスーほどいて、折って、まっすぐ縫うだけ!』(河出書房新社)が出た。

この本が出るのを楽しみにしていたんだー。大好きだけど、小さすぎたり、よごれてしまっていたりする着物を、この本が出たらほどこうと思って。
純ちゃんの服は、ほどいてまっすぐ縫うだけ。しかも、布を切り刻まないから、また着物に戻そうと思えば戻せるのだそう!
本を持って顔を見せてくれた彼女と、久しぶりにおしゃべりをした。
とても忙しいのに、きりきりとした空気を絶対にまとわないのが、彼女のいいところだなあと思った。

日時: 2007年11月15日 17:44 | パーマリンク | コメント (0)

2007年11月18日

バジルの使い道

山から下りてきたとたん、あちらこちらから魚や野菜が届き、
毎日台所で、出刃包丁をふるったり、葉っぱや根を触っては、
生活の感覚を取り戻している。
静岡に茨城、山口に愛知。当たり前だけど土によって野菜の形や味が変わる。
生でぱくぱく、ゆでてむしゃむしゃ、菜を好むことうさぎのごとし。
山歩きでだいぶやせていたのが、あっという間に元に戻りそうだ。

3日前、山口から届いたダンボールの底には、バジルが入っていた。
もう11月だというのに、まだバジルが!
さすがにもう葉っぱがだいぶ固くなっているけれど、それでもたしかに香っている。
バジルって何となく、西洋のハーブのような気がするけれど、いろいろな国の食卓のことを頭に描いていると、タイでの炒め物にはよくこの葉が使われていたよな、とか、台湾の三杯鶏なんてまさに組み合わせの妙で、あの味はバジルがないと成り立たないな、とか愛しいアジアの味が浮かんでくる。
そこで、ちょうど作っていた韓国風の魚と野菜の煮物の中に、バジルを投じてみようと思い立った。
コップにさして元気になった葉を、3本分くらい。

さて晩ごはん。どきどきルクルーゼをあけてみると。
このハーブ、コチュジャンやみそとも、意外な相性の良さを見せた。
おもしろいなあ。味と香りの組み合わせ。
料理ってほんとうに面白い。
これだから、どんなに疲れたり弱っていても、
逆に浮き足立って地からはなれそうになっても、
私は台所しごとをやめることができない。

日時: 2007年11月18日 13:49 | パーマリンク | コメント (0)

2007年11月20日

休符をよむこと

ジュンパ・ラヒリの新しい小説を買いに出かけたのに、
本屋さんをぐるぐる歩いているうちにすっかり忘れてしまっていた。
帰り道に、あっと思い出して、まあ今度でいいかと思う。

昨日はコトコトと汁ものを撮影した。
ちょうど冬のように寒い日だったから、窓を曇らす湯気がありがたかった。
テキスト用の撮影だったけど、テレビのディレクターさんもいらっしゃって、
編集部のほかの方も遊びにいらしたりして、女だらけのにぎやかな現場となった。
たくさんの料理研究家と仕事をしてこられたディレクターさんに、口を酸っぱくして、
「先の長い仕事だから、休みかたを覚えること」と言われた。
「皆さん80過ぎても現役で本当にお元気だけど、とにかく、休むのが上手!」と。
休むときは休む。しかも上手に休む。
仕事の最中での休みかた、にも意識をすること。
たしかに、いつも走っていればいいというものではない。

去年から、はい次はこの曲、次はこの曲、次はこの曲、
とひっきりなしに音を鳴らすような仕事の仕方をしてきた。
そうやって鍛えられた筋肉もあるし、
そうしなくては見えなかったこともたくさんあった。
それはとても、ありがたいことでもあった。
だけれどそれがピークに達した初夏、初めて彼女とお会いした時、
わたしの料理は、どこか攻撃的な味をしていたのではないかと思う。
夏を経て、まったく日常とかけ離れた場所へ行くことを、
体と精神が要求した。

「味がとてもやわらかくなった。」
撮影後、久しぶりに一緒に食卓を囲んで、まっすぐに、そういわれた。
わかるひとには、わかるのだな。
とても微妙な変化だけれど、例えば同じ醤油大さじ1であったとしても、
料理の味は作る人の状態によって変わる。
レシピで伝えられることの限界はそこにあるし、それ以上のことを伝えられないからこそ、
それぞれの台所には文学がうまれる。

空白の時間、休符の方を意識して、音を奏でること。
鍋の中の音楽には、どこまでいっても答えがない。

日時: 2007年11月20日 12:28 | パーマリンク | コメント (0)

2007年11月25日

お行儀の悪いことが好き

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職業柄、たくさんの甘いものと出会う。
しかし糖分に目がない、というタイプではないので、
少しだけ味を楽しませていただいて、
後はスタッフとか友人とかに、
「食べて食べてー」とお願いすることになる。
(っていうか、全部ひとりで食べていたらやばいだろう。)
ジャムもまたしかり。
近年、ジャムは本当におもしろくなった。
「コンフィチュール」という名の下、ありとあらゆる組み合わせの商品が、
またずいぶん素材を活かしたおいしいものが、
店頭に並ぶようになった。
それらを好奇心では楽しめるのだけど、
甘みの強すぎるものはやはり、
一瓶すべてを食べきることができない。

そうやって冷蔵庫に貯まっていったものを、
ここのところ同居中の家族が、毎朝せっせと食べてくれた。
そして私はひそかにねらっていた。
このはしたない楽しみを!
いよいよ最後になったジャムの中にヨーグルトを入れて食べるのだ。
ふっふっふ。
お行儀が悪いことって、なんでこんなに魅惑的なんでしょう。

日時: 2007年11月25日 12:06 | パーマリンク | コメント (0)

2007年11月30日

ラウラの料理で

夜も更け、ラウラはエプロンをはずし、腰を振り踊りだした。目がマジだ。
「足はテクニック、腰は気持ち!」
ベネズエラの音楽。バイオリンにフルート、クアトロという4弦の楽器。
「日本ならお祭りの音楽が一番近いと思う。」という、古典的な曲を、洗練させたCD。
ラウラの選曲、すごくセンスいい。
そう、この人、とてもセンスがいいのだ。
色彩感覚、料理の味の持っていき方、言葉の選び方。
とてもあたたかくて、クール。
そしてあたたかさのもとにあるものが、すごく力強い。
大好きだ。

昨日は、発売されたばかりの本をデザインしてくださった事務所で、打ち上げだった。
この事務所はとってもおもしろくて、都心のマンションなのだが、中に入ると、いきなり木の壁に障子がみえる。パソコンが並ぶ部屋で皆さん作業されており、その奥には、畳部屋がある。
「ベネズエラ人のイラストレーター、ラウラが、毎晩みんなのための夕食を作って、畳のへやで一緒に食べるんですよ。」
その話をうかがって、なんてすてきなデザイン事務所なんだ!と訪れる日を楽しみにしていた。
 社長のコウダさんは、おっしゃる。
「一緒にごはん食べたらそこんちの子供だから。」
本の撮影の時には毎日、お忙しい中ハーレーに乗って、わざわざ私のごはんを食べにきてくださった。
スタッフみんなでごはんを食べる。それは私が本作りの中で1番と言っていいほど大事にしていることだ。
だから、そうやって通ってくださるコウダさんや、デザイナーのクロちゃんが、しっかりと料理を消化してデザインしてくださったのを拝見し、また印刷所まで何度も足をのばして力を尽くしてくださったと伺って、とてもとてもうれしかった。

「打ち上げはうちの事務所でやりましょう。ラウラが作ってくれるよ。」
デザイン事務所で本の打ち上げなんて、異例のことだけど、お言葉に甘えた。
わあ、ラウラの料理が食べられる!ベネズエラ料理って一体どんなの!?
初めてお会いしたラウラが作ってくれたのは、アレパ(トウモロコシのパン)やら牛肉の煮込み、アボカドのサラダ、チリのディップ、黒豆のスープなどなど。途中から台所に一緒に立って、いろんなおしゃべりをしながら、作り方を教えてもらった。台所から戻ってきた私をみて「ディズニーランドへ行ってきた子供みたい!」と編集のG仔が言った。

メンバーの誰一人欠けても、本は出来上がらない。
写真家さん、スタイリストさん、編集さん、デザイナーさん、版元さんに校閲さん、そしてアシスタントさんたち。
それぞれがそれぞれの思いを込めてくださって初めて、本に気が巡る。
だから、打ち上げのときはいつも、心からありがとうございます、という気持ちでいっぱいになる。
そこに、ラウラの料理があった。
南米のリズムにみんなの笑う声、空いたワインのボトル。

朝起きたら、遠い外国から、いっぱい旅のおみやげを持って帰ってきたときみたいな気持ちになっていた。

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日時: 2007年11月30日 11:13 | パーマリンク | コメント (1)

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