『レイモン・サヴィニャック自伝』

この間、久しぶりに大学時代の友人ユイに電話をしたら、
「あれ?美里にサヴィニャック渡してなかったっけ?」と言う。
「なに。しらないよ。」
「去年出したんだよ、サヴィニャックの自伝。すげーんだよ。マジすげー。あの本。早く読んでほしい。」
と言う。
「ああそういえば、前に会った時に、どうとか言ってたやつね。」
「そう、2年かかったんだよ、出版にこぎつけるまで。とにかく、いい本だぜー。」
「もう、もったいぶらないで、早く送って!」
というわけで、昨日、彼が編集をしたサヴィニャック自伝が届いた。
きれいな本だ。
1枚1枚めくっていくのがもったいないような品がある。
だけれど、読み始めると、おもしろくって、1日で全部読み終えてしまった。
本当は線を引っ張りたいような言葉がたくさんあったけれど、なんだか汚したくなくて、
もう一度読み直すことにした。
これは、もっと若い学生の頃に読みたかった気もするし、
仕事をしている今だからこそ、ああ、と納得する部分もあるし、
ずっと時間が経ってから読めばなお違った風景が見える気もする、
そんな、本だ。
ものを作っているひと、特に職業でものを作っているひとには、
胸に響く言葉がたくさんころがっているのではないかと思う。
そして、若い人にとっては、ある種の学校のような読み方もできるかもしれない。
ここに出て来る作家や画家、音楽家たちをたどっていくだけでも、
(毎ページ左側にていねいな注釈が添えられているので、そこから先へ進みやすい)
ずいぶんと幅広いエスプリを横断できるはずだ。
私はこの人の色使いもさることながら、
明晰な言葉の選び方と、ユーモアのセンスがとても好き。
生まれながらの観察者が持つ、シニカルなところと、
それでいて、その木の幹の太くおおらかなところの
かけ合わされた感じが好き。
それはもちろん彼の描くポスターにありありとあらわれていることだけれど、
この本では、翻訳者(橋本順一さん)の手腕によるところも大きいのでは、とも思った。
それにしても、いつも大忙しでプロデュースの仕事をしているユイが、
こうやってたまに、道楽のようなエネルギーの使い方で作る
「いい本」は、本当にいい。
あの熱に、関わった方たちの気持ちが動かされるんだろうな。
何度でも読みたいと思う。
