あくまきの季節

「みさとサーン、鹿児島のおばあちゃんからちまき(あくまき)が届いたから、持って行くねー。」
と友人が遊びにきてくれた。
大きなあくまきを1本と、
「これ、借りてたタッパーね!」
と差し出された中には、
定番のきな粉×黒砂糖×塩ミックス(友人作)。
一緒にお昼ごはんを食べた後、さっそくあくまきを切って、みんなでいただいた。
ああなつかしい。
私は別に鹿児島に生まれ育ったわけではない。
それなのに、もうこの味が懐かしい。
2年前にお会いしたおばあちゃんの高い声が聞こえてくるよう。
「この端っこのところがおいしいんだよねー!」
と、きなこをまぶしたりしていると、友人が言う。
「私たちが子供の頃ね。ばあちゃんち遊びに行ったら、こんな丸い木の桶みたいなのに、この黒砂糖のきな粉が入っててね。そこに、宝探しみたいに、切ったあくまきがいっぱい埋まってるわけ。だから、あくまきの周りは、水分できな粉がとけてとろんとくっついててね。それを皿に取り出して、さらさらの新しいきな粉をかけて食べるのがおいしかったんだよねー。」
きな粉からあくまきをすくい出すときの、わくわくした気持ちが伝わってくる。
このあくまきを作るために、おばあちゃんは1年前に田植えをして餅米を育て、
灰をためて、竹の皮を剥ぎ乾かして、
何日も前から灰汁を作り、それに米を漬けて、
今年も娘や孫たちに送ろうと、ひとりドラム缶に薪をくべたことだろう。
これは一年がかりの食べものだ。
柔らかくもどした竹の皮に黄色い餅米を包みながら、
庭先であのあくまきのゆだる香りを嗅ぎながら、
宅急便のラベルに名前を書きながら、
おばあちゃんの中にうまれたであろう思いと、
しょっぱ甘いきな粉のからまったあくの渋みが胸に響き、
私はこの味がなくならないでほしいなあと、
心から思った。



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