料理研究家 濱田美里

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腰痛の薬膳

2020.03.15 │ ブログ

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身近な人が突然ぎっくり腰になり、寝返りも打てないほどの激痛で、歩けなくなった。
どなたかの役に立つことがあるかもしれないので、備忘録的に書いておこうと思う。

腰痛を東洋医学的に診ると、腎虚、風湿、瘀血、陽虚など色々考えられるが、
その人の場合、どうみても腎虚だろうと思った。
(顔色、白髪、生活習慣、皮膚の感じなどから)

鍼に行き、信頼できる先生の意見もお聞きしたところ、
「おなか、腰回りが激しく虚した状態」とおっしゃっていて、
(ちなみにあれだけ腕の立つ先生ですら、その場で痛みは1割程度しかとれない、とおっしゃるくらい、「見たこともないひどさ」の腰痛だったそう)
やはり腎虚、腎精不足、腎陽虚あたりだな、とあたりをつけた。

鍼の後に、痛み止めの湿布薬をはり、
(東洋医学と西洋医学は相反しない。東洋医学の得意分野は予防、治癒の後押しと考えている。)
こういう時にこそ、「回復を助けるための薬膳」が必要、と思った。

薬膳とは何か。
それは薬っぽい味のたべものではなく、たべもの自体が薬になること。
「弁証論治」によって組み立てられた料理。
なので、何よりも、「症状の本質を見ること(弁証)」が必要になる。

今回のケースでは、表に出ている症状は腰痛だけど、弁証は「腎虚」。
なので、腎虚に効果的な料理が薬膳になる。
思い浮かぶ食材は、羊、くるみ、黒ごま、黒豆、エビ、にら、山いも、枸杞子、松の実、栗、黒キクラゲ、昆布、煮干しなど。
(生徒さん達にいつもお話しするように、腎には「黒いもの」)

すぐに作ったのは、以下の料理。

・にらを山のように入れたチヂミ(中国の古い文献を見ていると、腎虚への処方に、よくエビとニラを炒めたものがでてくる。スーパーをのぞいたら、いいエビがなかったので、ニラがたっぷり食べられるもの、と考えた。さらに言うと、小麦粉を入れすぎると虚に傾くので、今回は玄米粉と小麦粉をミックスして、粉は少なめにした。だしはいりこの粉末と鰹節の微細粉をそのまま入れて使った。)

・ちぢみのたれは、ポン酢に黒すりごまを(←これはちょっとしたことだけど、普段の生活の中でも取り入れやすいと思う。味もいい)

・鶏と山芋のスープ(本当は羊を使いたかったけど、なかったので鶏で。山芋は皮をむいて、食べやすい大きさにどんどん切っていれる。鶏は塩をしてさっと湯びいて使うことは、普段の料理と同じ。多少の薬効を損ねたとしても、そこは料理の質の方をとりたい。今回はここに参鶏湯キットを入れた。高麗人参は、腎虚に限らず大補元気の強い薬なので、虚証には有効。ナツメ、枸杞子、松の実もよい。気虚対策にオウギも足した)

・黒豆とかち栗を煮た(かち栗は栗を干したもの。なければ、甘栗でも良い。今回は時間がなかったので圧力鍋で。ただし、ここでは砂糖を入れるのはだめ。デザートとして食べたいなら、器の中で蜂蜜をかける方がいい。私はクルミの蜂蜜漬けと一緒に食べている)

・お茶は杜仲茶に。

これらのものを食べた後に、顔色がぐっと良くなり、おなかまわりの気が一段アップしたように見えたので、これは大丈夫、と思った。
翌朝には、痛みが5割くらいまでひいて、杖無しで歩けるくらいまで回復したとのこと。
しばらく腎気を養うものをとり、冷やさないように気をつけていたら、よくなると思う。

日本は湿の国で、常にからだの水はけが悪くなりがちだし(腎に負担をかけやすい)、
男性は女性よりも冷えに鈍感なので、突然の激痛というところまで虚してしまうことはよくあると思う。
特に冬場は腎気が衰えがちなので、上に書いた食材を日常生活の中に取り入れることは、どなたにとっても有効ではないかな。

追記:そういえば、以前に腎について教室でお話ししている時に、医師をされている生徒さんが「腎臓」のことかと思われて、混乱されていたことがありました!
東洋医学で言うところの「腎」は現代医学の臓器の腎臓とは違います。
生命エネルギーの源、そして泌尿生殖器系と考えられるとわかりやすいかと思います。
なので、症状としては、白髪、脱毛、耳鳴り、難聴、腰痛、排尿障害(尿が近いあるいは出にくい)、精力減退、足腰の冷え、おなかまわり足腰に力が入らない、皮膚の乾燥といったものになります)


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