料理研究家 濱田美里

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今年出会った味と言葉

2022.12.27 │ ブログ

ようやく昨日ほぼ年内の仕事が終わったので、
今日は冷蔵庫の大掃除をしましたー。

2台の冷凍冷蔵庫の棚を全て取り外して洗うので、結構な重労働!

とは言え、まあ単純な仕事なので、
手を動かしながら、あれこれ今年のことを振り返っていました。

今年出会った味、読んだ本のベスト1は何だったかなあ、なんて。

外で食べた味で言えば(あまり外食はできなかったけど)、
ダントツで三宮Baronの井上シェフのお料理。
本は『子宮』(盛可以/河村昌子訳 河出書房新社)かなあ。

どちらも食べて(読んで)からもう1ヶ月以上も経っているのに、
今でも思い出すと心が震えるほど。
一朝一夕でできる味(言葉)ではなかったから。

この本と出会ったのは、秋に軽い気持ちで始めた中国語が、
思いのほか楽しくて、のめり込んでしまい、
そういえば私、現代中国文学って全然知らないなあ、と本屋さんへ行ったのがきっかけ。

中国湖南省益陽という農村に生まれた四世代の女たちの物語なのだけど、
決して昔の話ではなく、三世代目の5人姉妹は1965年から1975年生まれ。
(上海で女医になる五女は私と同世代)

都市で、田舎で、その世代世代で、女性であることのあれこれや、
強さや弱さや計算高さや運命や、習俗や自由さが、
凛としつつも柔らかい文体で、描かれている。

物語自体はダイナミックで、大陸らしいスケールの大きさで、
カラマーゾフとか、百年の孤独とかを思い出させる感じ。
フェミニズム文学の枠に入れるのは勿体無いくらい。

そして、女性の生き方に触れるとき、そのバックに流れるのが西洋の個人主義でなく、
家父長制や儒教などがある東洋の国であるところが、
日本人女性の私には染み入るようで、
現代の中国の文化をもっともっと知りたいと思いました。

(そういう意味では、人気YouTuberのヤンチャンの『中国大陸大全』(楊小溪/KADOKAWA)
も、すごく理解を助けてくれた。
こちらは、若くて瑞々しい文章で、現代の中国のことがよくわかるとってもいい本だった。)

冷蔵庫を拭きながら、来年のことを思い浮かべると、
このような3年の後なので、世界がなんとなくガチャガチャッとしそうな気がして、

どんな流れになったとしても、生活を大事に、心にしずけさや柔かさ、自由を保っていたいなあ、と思いました。

ほんの少しでも、あのような味や言葉、作家の精神の泉のようなものに触れられたのは、とても幸せな体験だったなあ、
胸にそっと置いておきたいなあと。

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