料理研究家 濱田美里

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ヘルシンキ備忘録3

2018.03.23 │ ブログ

3月23日朝4時のストックホルム。現在の外気温はマイナス2度。
ヘルシンキからさらに1時間の時差があるので、
やっぱり早すぎる時間に目覚めてしまう。

昨日、ヘルシンキの空港で食べたサーモンサンドイッチがものすごくおいしかった。
お店のお姉さんと厨房のお兄さんに心からのブラボーを伝え、
パンについて尋ねたら、入っているものを全部書いてくれた。
「“fumma reissumies”という名前の伝統的なパンよ。」

別の売店でそのパンを見つける。
ちょうど空いている時間だったので、お店のおばさんに聞いてみると、
「これは全部ライ麦のパン。右のが一番ライ麦の比率が高いよ。(パッケージの裏を見て)ほら、83%でしょ。
これが一番硬くてちょっとだけ酸味がある。左の方が柔らかくて甘めだから食べやすい。小麦?ああ、少しは入っているかもね。でもちょっとよ。これらはフィンランドの伝統的なパン。皆食べてる。冷凍もできるわよ。」
このパンで作ったサンドイイッチがすごくおいしかったと伝えると、うれしそうに「私たちは白パンなんて食べないからね。」
うん、よくわかる。トマトとモッツァレラのチャパタサンドの方は、単なる空港の味だった。
黒パンサンドの方はこの国の魂の味。あ、ソウルフードってそういう意味か、と思う。

夕方、ストックホルムに着く。
あったかい!温度を見ると4度。
4度をあったかいって思うなんて、相当いかれてしまった。

でも、今回はヘルシンキに寄ってきて、すごくよかった。
西と東が混ざり合う、文化が「渡る」、ということに関して、
肌で(舌で)感じることがたくさんあった。
そして、ふと思う。
もしも今、同じヨーロッパでも南欧の方に縁があったとしたらきっと、ギリシャとかトルコのあたりを西と東の中間点と感じただろう。
若い頃の私なら、間違いなくそちらを好み、
ナッツやフルーツの豊穣や、スパイスの香り、南の陽気さや喧噪、怠惰、おおらかさの方に魅力を感じたはずだ。
そして、そこには「黒パン」は無かったはず。

こんな、海も池も川も凍ってしまうような(本当に真っ白だった!)過酷な土地で生まれた文化。 
寒さが何よりな苦手な私が、ポーランドやチェコですらなく、さらに北回りのフィンランドを経て、この西の国に向かうことになるなんて。
人生は本当にわからない。
あと2週間あまり、北ヨーロッパの冬の終わりと春の訪れ(訪れるのか?)をたっぷり味わいたいと思う。


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